平成28年度国際理解セミナー 講演

 

   

 

企業の国際化とこれから求められる人材像

 

 講師 日本貿易振興機構(ジェトロ)

金沢情報貿易センター

 

所長 末廣 徹 氏                             

 

 

 私は1990年に今話題の関西学院大学を卒業し、日本貿易振興機構(ジェトロ)に入会いたしました。学生時代にクラブ活動でポーランドへ行ったこともあり東欧を希望しており、これまでルーマニアとウズベキスタンにおいて活動することができ、これらの海外駐在における経験から企業の国際化の進め方やこれから求められる人材像について述べてみたいと思います。

 

 入社5年目、27歳にして初めて海外駐在に派遣されました。これまでは上司が計画を立て、指示されたプロジェクトの一部分を担当する仕事でしたが、海外で一人事務所長として活動することになり、そこでは自分で現状分析を行い、計画を立てて予算を獲得して実行することが求められます。

 

 まず現地企業の本音を聞こうと企業訪問を企画し、英語を話せる現地スタッフに助勢を求めましたが、「私はアナリストなので資料集めはするが、企業のヒアリングは担当外である」と断られました。外国人は常に契約に基づいて考えおり、セクショナリズムが強く、自分の職務についてプライドが高く、契約外の仕事を指示されることは、キャリアアップや評価に繋がらないと考えています。これに対して、日本人は会社に入社した意識が強く、会社に広く知識と経験を積ませてもらいながら、時間をかけてジェネラリストとして育ててもらうという社会風土が定着しています。

 

 そこから、「よろしくね」とか「皆で協力し合いながら」は外国では期待してはいけないのだ。それぞれの守備範囲をきっちりと決めて、才能を発揮してもらおうと考えるようになりました。

 

 帰国後は日欧産業協力センターに出向し、日本的経営の普及に努めましたが、中央官庁の局長への表敬訪問のあり方、有名な大学教授の講座における意識の差、企業訪問の目的意識の違い等に悩まされました。欧州のビジネスマンは、自他は平等で上下関係はなく、自身の主張を展開します。それに対して日本人は予定調和や暗黙知に基づいて行動しています。それゆえに、コミュニケーションをしっかり取らなければお互いの認識の差を埋めることは難しいと知りました。特に、信頼関係の構築には日頃のコミュニケーションが重要であり、そのためには、ほめることが大切ですが、同時に何が良かった、どこを改善すべきかを分析して伝えることが必要です。外国籍の人材は理論的な上司を求める傾向が強いようでした。

 

 そして、2010年に2度目の海外駐在でウズベキスタンに参りエリア所長として中央アジア5か国を担当することとなりました。そこでは担当国を訪問する中で「日本製品が欲しいのに買えない」「この国内での問い合わせ先が見つけられない」「代理店に質問しても回答が遅い」などの声を多く聞きました。日本の業者からは「アフターサービスの体制がその地域にはない」「その地域は別の代理店が担当している」などの回答で、結果的に「売りません」となり、中国製品や韓国製品に市場を明け渡すこととなっていました。日本人の正解を持ってから行動するようなことや完璧主義は、消極性の裏返しとなっている感じがしました。

 

 海外駐在を通じて実感した考え方の違いは、日本人は「暗黙知」を前提に、察してくれることを期待して物事を進めがちだが、外国人は「聞いていない」「私の責任ではない」と主張するので、役割と守備範囲を個々に定義し認識させることが重要です。

 

 ジェトロでは日本企業の海外事業展開に関するアンケートを取っています。2011年度から6年間の海外事業展開に関する各企業の意向について、さらに海外事業の拡大を図る意向は55%から70%へと増加していますが、特に大きく伸びた2015年は為替の変動による要因が大きいものと考えられ、円高により海外展開が進んでいるようです。

 

それでは、企業が海外へ事業展開する理由は何ですかと尋ねると、よく言われる「国内需要の減少」が第1ではなく、実は「海外需要の増加」が1番で7割強を占めています。また、海外ビジネスの展開がうまくいっていますかと尋ねると必ずしもそうではないようです。大企業では海外ビジネスの人材確保を1番の課題としていますが、中小企業では海外でのビジネスパートナーを探すこと(提携相手)を1番の課題としています。

 

海外の現地輸入者の声としては、日本企業に対するポジティブな意見としては、かゆいところまで手が届く、約束事はきっちり守ってくれる、無理なお願いにも対応してくれる、作りが丁寧で正確などの意見があり、改善を希望する項目としては、現地の販売価格を配慮しない価格設定が高い、規制に対応していることを確認する書類の提供や価格交渉の再提示要請など、依頼事項に対するレスポンスの遅さ、悪さなどがあります。

 

今後への課題としては、取引開始初期における販促支援として認知度向上のための値引きやツール提供。現地向け仕様の提案の代わりに総販売店契約を付与するなどの現地バイヤーとの相互補完を整えること。商社ではなく物流業者と組んだ商流の構築などの直接貿易の手立てを準備することがあります。

 

 具体的には、高価格を納得させるための受賞歴、評価などのストーリや、相手の立場に立った提案などが必要です。また、相手方と英語で対応することを敬遠することなく、企業のホームページなども日本語だけではなく英語よる表記を行っておくことも大切でないかと思います。

 

 次に、グローバル化を支える人材について考えるとき、経済同友会が実施した「企業経営に関するアンケート調査」によるとグローバル化推進のための課題については、グローバル化を推進する人材の確保・育成であるとする意見が約8割を占めています。そして、各企業においてグローバル化を推進する人材については、いないが不要ですが約2割、十分な人数がいるが約2割となっていますが、グローバル化を支える人材がいるが不足している、と必要だがいないとする企業が約6割となっており、多くの企業が人材の不足を訴えています。

 

 それで、グローバル化の推進について考えると、失敗や変化は発展するために必要なステップと捉えること、日本人は正しい答えを模索するあまりに対応が遅れがちであるが、何よりもスピード感が大切であること。自分の考えを発信しない人はいないも同然です。暗黙の了解は内輪の理論であり、積極的に発言することが大切で、本当に必要ならば説得は可能なはずです。また、積極的にいろいろな人と交流することも大切です。異文化体験することで、自らを客観視でき、共通項も見つかります。人のネットワークには新たな気づきや出会いをもたらすことになります。

 

 異文化体験からグローバル人材に求められる能力について考えると、未知の領域にも積極的にチャレンジする行動力、積極的な発信力、そして異文化の活用力が大切と言えます。外国語、特に英語でのコミュニケーション能力はそれらを支える基礎的な能力ではありますが、あくまでも“意思疎通の手段”と考えるべきでしょう。

 

 その意味で、今、発展途上国において現地の人々とともに活動しておられる青年海外協力隊の方々はグローバル化のための最適な人材と言えるものであり、深い敬意を表するものです。   (文責事務局)

ご意見、ご質問、メッセージ等々お気軽にお問い合わせください。

コードを入力してください。:

メモ: * は入力必須項目です

青年海外協力隊とは

 青年海外協力隊は、青年の海外に向ける熱い思いに道を開こうと1965年(昭和40年)4月20日に、わが国政府の事業として発足しました。    詳細へ

 

お問合せは  

TEL 076-225-7002